ミルクラン輸送とは?意味や定義、使い方について
荷物の輸送にはミルクランといわれる輸送方法があることをご存知でしょうか。
ミルクラン輸送は状況によっては大きなコスト削減につながる可能性があり、しっかりと知っておくべき輸送方法だといえるでしょう。そこでここではミルクラン輸送の全容について解説します。
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ミルクランとは?
企業が原材料や部品などを購入する際に、各サプライヤー(供給する側)からそれぞれ納品される形ではなく、購入する側が1台のトラックで各サプライヤーのところを集荷して回る方式のことです。
語源は、牛乳メーカーが各牧場を回って生乳を確保していたことに由来します。
国内でも自動車メーカーや電機メーカーなどで採用されており、その多くはメーカーが委託した物流業者が代理として集荷・配送を担う方法で、「引き取り物流」とも呼ばれています。
集荷された原料や部品はセンターに集められ、そこからメーカーに運び込まれる方法が最も多いと考えられます。
個別配送とミルクラン輸送の違いとは?
物流コスト増
個別配送の場合は、それぞれのサプライヤーがメーカー側に部品を配送するので、代金に運賃も含まれます。
自動車部品などは数百社の部品会社から納入されますから、その運賃は膨大です。仕入れる部品がボルト1箱だったとしても、1台の車両で納入されるのですから、運賃は発生します。
たとえば10社から納入されれば10社分の燃料費や高速料金、人件費がかかるうえに、CO2の排出量もそれだけ増えます。
在庫管理
個別配送の場合は、生産計画どおりに部品が供給されるとは限らないため、必要以上の在庫を抱えたり、欠品してしまったりといったリスクが生じやすくなります。
また、たくさんの車両が搬入してくるわけですから、納品された部品を管理するだけでも大変煩雑な作業になります。
荷受時の負担増
個別配送の場合は、次から次へとたくさんのサプライヤーが納品するので、そのたびに検品が必要になり、荷受けの負担は大幅に増えます。
そのための人員確保もコストが上がる原因になりますし、多くの車両が出入りすれば事故のリスクも上がります。
搬入してくるサプライヤー側のドライバーも待機時間が長くなり、負担が増えます。さらには運送業界全体でみた場合、深刻なドライバー不足の今、過重労働を招く引き金にもなりかねません。
ミルクラン輸送のメリットとは?
製品コストの把握
ミルクランを採用すると各サプライヤーに支払うのは純粋な部品代のみになるため、製品コストが把握しやすくなります。
コストが明確になることで資金の調整などもしやすくなり、生産計画が立てやすくなります。
調達コストの引き下げ
先にも解説したとおり、ミルクラン輸送を導入することで、サプライヤー側に支払う運賃がなくなります。
メーカーが支払わなければならない輸送費は、各サプライヤーを巡回するトラックへの運賃のみになりますから、輸送費が削減されます。
また、検品作業もまとめてできますから、そこにかかる人件費も削減できます。
輸送トラックの削減
ミルクランのメリットは、調達コスト削減ももちろん大きいのですが、輸送トラックが削減されることも非常に大きなメリットです。
各サプライヤーの車両が次々に集まってしまえば、混雑による待機時間は増え、構内での事故が発生するリスクが生じます。
たくさんの車両が走ることにより近隣道路が渋滞することもありますし、CO2の排出量も増え、環境問題も発生します。
ミルクラン方式を採用することによって、これらのデメリットを極限まで減らすことが可能になります。
ミルクラン輸送にはデメリットはないの?
ミルクラン最大のデメリットは、サプライヤーが広範囲に点在している場合は配送費が高くなる、1台のトラックでは回り切れないといった状況が生じることです。
委託を受けた物流会社側は、かなり緻密な計画を立てなければなりません。
また、物量が多くて1台のトラックでは積みきれないこともあります。その場合は2度行くか、それとも1台追加するか等、臨機応変な対応が必要です。
さらには、サプライヤーの敷地面積や立地によっては、大型トラックでは進入できないということもあります。
サプライヤー側が集荷時間に間に合わなければドライバーの待機時間が生じ、その先のスケジュールに影響するというデメリットもあります。
また、そもそもミルクランはサプライヤー側の協力がなければ成立しないシステムです。
実際にすべての部品調達をミルクランで完結することは難しく、協力が得られなかったサプライヤーからは直接受け入れている現状もあります。
サプライヤーとの集荷情報の共有が必要!
サプライヤーは集荷時間に合わせた準備や場所の用意をしなければならないので、綿密な打ち合わせが必要です。空容器の返却方法や緊急時の対応方法もあらかじめ決めておかなければなりません。
打ち合わせで決定したすべての情報は、メーカーとサプライヤー間だけでなく、物流会社や実際に集荷にあたるドライバーとの共有が不可欠です。
また、違うドライバーが来るたびに説明することはサプライヤーの負担になるため、集荷方法などの情報をドライバー間で共有することも重要です。
まとめ
ミルクランを実際に導入するにあたっては、さまざまな課題を解決する必要があります。実際に導入しているメーカーでも、すべてのサプライヤーがミルクランに参加しているわけではありません。
けれどこれからの時代、コストや環境問題などの観点からも、ミルクランは物流の主軸になりうる画期的な輸送方法になることはあきらかです。