運送業の労働時間は違法だらけ! トラック運転手の労働基準法の拘束時間などを徹底解説
2018/12/27
トラック運転手をはじめとした【運転を仕事にしている人】には、長時間労働することなく健全に仕事ができるように、労働基準法で特別な基準が定められています。
これを通称「改善基準」と呼びます。
いわゆる36協定の内容や、時間外労働の基準など、トラック運転手なら気になるのではないでしょうか?この記事では、改善基準の定義と背景、トラック運転手が知っておくべき改善基準のチェックポイントを徹底解説します。
Contents
労働基準法「改善基準」とは
厚生労働省による、労働基準法の改善基準の公式な定義は下記になります。
改善基準とは、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(大臣告示)のことを言い、タクシー等の自動車運転者について、労働時間等の労働条件の向上を図るため拘束時間、休息時間等の基準を定めているものです。
(引用元:改善基準って何ですか?)
改善基準の背景には、長時間運転による運送業界の「ブラック」化があります。長時間運転による睡眠不足や疲労は、交通事故に繋がりかねません。大型トラックであれば、交通事故の損害は多大なものになります。
そんな最悪な事態を防ぐために、改善基準によってトラック運転手の最低限の労働基準を定めているのです。トラック運転手がハッピーに働くために、そして交通事故による被害を防ぐために、とても重要な役割を担う労働基準法です。
必ずチェックするべき労働基準法のポイント
「ブラック」と言われるトラック運転手の仕事環境ですが、実際は会社によって大きく環境が異なります。
運営がしっかりしている会社では、労働基準法やそれにともなう基準をしっかり遵守しています。一方で、法令違反を放置し、トラック運転手を過酷な環境で働かせている会社があるのも事実です。
「今の職場は労働基準法を守っているの?」、「いざという時のためにトラック運転手の労働基準を知っておきたい…」という方のために、この記事では労働基準法を4つのポイントに分けてわかりやすく解説します。
これから転職を考えているトラック運転手の皆さんは、会社を選定するときのチェックリストとしてもご活用ください!
労働基準法の知っておくべきポイント
トラック運転手の方、またはトラック運転手を目指している方は、労働基準法の中でも、主に下記のポイントを抑えておくとよいでしょう。
- ①拘束時間(労働時間)の基準
- ②休息時間の基準、休憩時間との違い
- ③運転時間の限度
- ④休日の定義と時間外労働の限度
これらを知っておくことによって、運転手として自己管理ができるようになるのはもちろん、自分の会社が法令違反をしている際に、すぐに気づき対処することができます。
トラック運転手にとって労働基準法を知っておくことは、いざという時に自分の身を守るためにも必要不可欠と言えます。
①拘束時間(労働時間)の基準
労働基準法の【拘束時間】とは、出社してから退社するまでの全ての時間をさします。荷待ち時間や作業時間、お昼休憩などの運転していない時間も、拘束時間に含まれます。
トラック運転手の拘束時間の限度は、原則1日13時間までです。13時間を越えると法令違反となります。
とはいえ、トラック運転手の仕事柄、荷主の想定外の要望や渋滞などで、拘束時間が13時間を越える場合もあります。この場合、特別に拘束時間の延長が認められていますが、最大拘束時間は16時間を超えてはいけず、1日の拘束時間が15時間以上である日は1週間に2回以内でないといけません。
トラック運転手は顧客の待ち時間などで、休憩中も自由に動けないことが多い仕事です。転職や就活の際は、実務時間だけでなく、拘束時間も確認することをおすすめします。
②休息時間の基準、休憩時間との違い
労働基準法の【休息時間】とは、睡眠時間を含めた勤務と勤務の間の時間をさします。作業の合間やお昼休憩などの休憩時間とは異なります。
トラック運転手は、改善基準により最低8時間以上の休息をとることが義務付けられています。また、休息時間は自宅で過ごすことが奨励されています。
ただし、渋滞などで荷物を届ける時間が大幅に遅れるなど、想定外の事態で8時間の休息が取れない場合もあります。その場合、1日継続4時間以上、合計10時間以上の休息時間を設けることを条件に、休息時間を分割して与えられることが認められています。
また、車内に体を伸ばして休息できる設備がある場合のみ、休息時間を4時間まで短縮することが認められています。
休息をしっかりとらないと、睡眠不足で体を壊してしまいます。改善基準に沿って休息時間を必ず確保しましょう。
③運転時間の限度
【運転時間】は、その名の通りトラック運転手が運転している時間をさします。
長時間の運転は運転手の集中力を低下させ、最悪の場合交通事故に繋がる危険があるため、労働基準法で限度が定められています。
まず、連続した運転時間は最大4時間でないといけません。また、4時間運転するごとに30分間の休憩を取ることが義務付けられているため、トラック運転手は〈4時間の運転+30分休憩〉のスケジュールで運転計画を立てなければいけません。
そして、2日間(48時間)の平均運転時間は8時間以内である必要があります。
注意しないといけないのは、【拘束時間】が1日最大16時間であるため、例えば1日目に18時間、2日目0時間運転して、2日間の平均運転時間が8時間の場合は法令違反となります。
④休日の定義と時間外労働の限度
トラック運転手の【休日】とは、【休息時間】に連続した24時間を合わせた時間をさします。
休息時間は8時間以上と定められているため、休日は8+24=32時間以上である必要があります。例えば、休息を8時間取っても、休日が20時間しかなければ法令違反となります。
また、トラック運転手が特に気になっているのが【時間外・休日労働】の基準かと思います。
トラック運転手の時間外・休日労働の限度は、1日の最大拘束時間である16時間が限度です。また、拘束時間と同じように、時間外労働が15時間以上ある日は1週間で2回以内でないといけません。
また、休日労働は2週間に一度しか行えません。2週連続で休日労働を強いられるのは法令違反となります。
「36協定」とは
「36協定」とは、企業がトラック運転手に時間外・休息労働を行わせる場合に、【労働基準監督署】に届け出を提出する決まりのことです。
時間外及び休日の労働(第36条)
時間外または休日に労働させる場合には、労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者と労使協定を締結し、事前に所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。
この届け出を行わずに、従業員に時間外労働や休日労働を強いることは法令違反です。
しかし、多くの事業所でこの決まりが守られていないのが現状です。事実、2018年に日本の約6割の事業所で、違法残業などの長時間労働や時間外労働が確認されました。
転職や就活の際は、この36協定をしっかり守っている会社かどうかを事前に確認することをおすすめします。
就職・転職のときに使える労働基準法の確認方法
労働基準法のチェックポイントをご紹介してきましたが、就職や転職の面接の際には、面接官に面と向かって聞きにくいかと思います。
例えば、「御社は労働基準法についてちゃんと守っていますか?」とダイレクトに質問してしまうと面接官は失礼な質問だと感じてしまう可能性があります。
労働基準法周りについて質問する場合には、できる限り間接的に分かるように質問することがポイントです。
例文をご紹介するので、ぜひ使ってみてください。
①運転時間について質問する場合
求職者「御社の担当する案件ではどこからどこまでの配送が多いでしょうか?」
面接官「東京の営業所から福岡までの配送が多いかと思います。」
求職者「大体どのくらいのスケジュールで配送されるのでしょうか?」
面接官「昼前に東京を出て、夜には大阪に到着し1泊します。
翌日は朝には大阪を出発し、福岡で荷降ろししたら大阪に戻って夜にまた1泊します。
朝に大阪を出発し、夕方前に東京に戻ってくるようなスケジュールです。」
→この場合、厳密な時間は不明でも、大阪〜福岡間の移動で、連続運転時間4時間につき30分以上の休憩時間が確保されたスケジュールになっていれば、労働基準法上問題ありません。
②休息期間について質問する場合
求職者「通常の始業時間と就業時間は何時ですか?」
面接官「当社は7:00に始業開始で17:00に終業となります。」
求職者「繁忙期などは遅くなることもあると思いますが、その場合はみなさん何時頃に帰ることが多いですか?」
面接官「大体22:00くらいかと思います。」
→この場合、7:00〜22:00で拘束時間15時間、休息期間9時間となるため、問題ありません。
※ただし15時間を超える拘束時間は週2回まで
職場が辛いと感じたらエージェントに相談を
いかがだったでしょうか?以上が、トラック運転手の労働基準法や改善基準についての主なチェックポイントとなります。
トラック業界は今、深刻な人手不足を受け、労働基準法を守っている会社であることをアピールする企業が増えてきています。
人手の確保のために<比較的多くの休日を確保している会社も存在します。そのため、今より条件のいい会社を選ぶには今がチャンスなのです。
条件の良い会社へ転職するには、【転職にはエージェント】を活用するのがおすすめです。
転職エージェントは、無料で条件に沿った求人を紹介してくれて、実際に内定をもらうための無料サポート(履歴書の添削や面接の練習)までしてくれます。
今の会社が辛いと感じている人は、まずエージェントに相談して、どういう求人があるのか聞いてみることをおすすめします。