トラック運転手の働き方と労働基準法の改正について
2020年4月から中小企業を含むトラック運転手の労働基準法の改定が行われました。
これによってどのような改定が行われた上で、トラック運転手の働き方がどのように変わっていくのかということについて紹介していきたいと思います。
Contents
長時間労働が蔓延していた運送業界
運送業界ではバスドライバー、トラックドライバーなどを含め、長時間労働が当たり前と言われてきました。
平成30年に東京労働局が都内の道路貨物運送業に対して行った臨検監督の結果によれば、
対象となった「271事業所」のうち「220事業所」で法令違反が行われていることが判明しました。これは81.2%にもなる違反率です。
運送業界ではドライバー不足、ドライバーの高齢化などが常に問題になってきており、それが長時間労働などの労働環境の悪化を招き、
労働環境の悪化がさらなるドライバー不足につながるという悪循環が起こっています。この悪循環を断ち切るために大規模な法令の改定が期待されていたのです。
トラック運転手の労働基準法改定の背景
居眠り運転の増加
長時間労働などの過酷な勤務体制によって、睡眠時間が不足し、ドライバーが運転中に居眠り運転をするということが多発してきたということがあります。
特にツアーバスの運転手が運転中に居眠りをしたことで事故を起こし、運転手を含め乗客のほとんどが死傷した事件など、
大規模な事故が起こったことで、その実態が世間に知られるということも直接のきっかけとなっています。
スピード超過
過労状態で集中して運転ができないまま高速道路などの単調な道路を運転していると、気が付かないうちにスピードが超過することが多くなります。
気が付いたときには壁や先行車に追突しているということがあります。大型トラックの場合は大規模な事故に発展することが多いという特徴があります。
輸送水準の低下
疲れている、時間がないという状態が続くと「車両の点検」「荷物の数量や内容の確認」「安全配備」などを怠ることが多くなります。
そのため、配送ミスや整備不良などを引き起こしやすくなり、輸送や配送のレベルが大きく低下することになります。
トラック運転手の労働時間の基準
拘束時間
拘束時間とは「労働時間」「休憩時間」などを含め「使用者に拘束されている時間」を指します。今回の改正において自動車運転者の拘束時間は、
- 原則として1日13時間まで
- 延長する場合でも最大16時間まで
- 拘束時間が15時間以上となる日は1週間に2回まで
となっています。この決まりによって過剰な労働時間を抑止するということが期待されています。
休息時間
休息期間とは「使用者の拘束を受けない期間」のことを意味しています。
勤務と次の勤務の間にあるもので、直前の拘束期間における疲労の回復を図るとともに、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、
その処分は労働者の全く自由な判断にゆだねられる時間を指しています。
この休息期間については、原則として「継続する8時間以上」の休息が必要と定められており、勤務と勤務の間が8時間以上空いていなければなりません。
そのため、日付が変わるまで勤務して、次に早朝から次の勤務が始まるというような働き方は原則としてできないということになっています。
運転時間
運転時間はその名前の通り、運転している時間です。
- 継続で4時間
- 2日平均で1日あたり9時間
- 2週間平均で週あたり44時間
という決まりがあります。特にその1日で仕事が完結する近距離ドライバーよりも、日がまたがっての勤務になることが多い長距離ドライバーに対してのものとなっています。
連続した日で長時間の運転にならないようにと配慮されています。
連続運転時間
連続運転時間は継続して運転する時間で上記の通り4時間以内となっています。
4時間以内もしくは4時間経過直後に30分以上の休憩時間を確保することで運転を中断しなければいけません。
休日
休日とは、
- 休息期間+24時間の連続した時間
と規定されています。そのため32時間を下回ってはいけないと決められています。
違法労働が分かった時の対処方法
行政機関への相談
違法労働を強いられているという状態の時は「労働基準監督署」に対して相談や通報をするという方法があります。
以下の3つの方法があり、選ぶことができます。
- 相談窓口への直接訪問(平日8時30分~17時15分)
- 電話での相談(「労働条件相談ほっとライン」平日17時~22時・土日祝9時~21時)
- メールでの相談「労働基準関連情報メール窓口」(24時間)
こういった相談や通報は匿名でも行うことができますが、匿名の場合は名前を申告するよりも後回しにされることが多く、実際に行動するまで数ヶ月かかることもあります。
急ぐ場合は名前を申告した方が良いかもしれません。
証拠の保全
こうした連絡を行う場合は、後で正確に調査できるように証拠を残しておくことが重要となります。
タイムカードのコピーや運行記録書など働いていた時間がはっきりとわかるものを証拠として残しておきましょう。
こうした記録、証拠などがあれば違法労働状態であるということを証明できるだけでなく、
支払いがされていない残業手当、時間外手当などがあった場合は追加で支払いを求めることができるようになります。
長期間こういった状態が続いていた場合などはかなりの金額を請求できることがありますので、勤務を証明するものは必ず残しておきましょう。
トラック運転手不足解消につながる労働基準法の改定
運送業界のドライバーは長時間労働など違法労働をしているということが蔓延していたという歴史があります。
かつてはその長時間労働のために残業手当などを合わせて高額な収入をうりにしている場合もあったのですが、近年ではドライバー不足などの理由によって、
本人の意志に反して違法労働を強いている場合もありました。
それが原因となってますますドライバーが不足するという悪循環となっていたのです。
今回の労働基準法の改定は労働環境の改善化をはかり、ドライバー不足を解消していくことができる可能性がある改定となっています。
まとめ
大きな事故が連続して起こったことなどもあって、運送業界の労働環境は急激にホワイト化されてきています。
これからトラックドライバーを目指そうという人も安心して働ける労働環境になっていく一つの理由として、今回の労働基準法の改正があると言えるでしょう。